山田孝之さん

決して顔は好みではない。

濃い髭も、体毛の濃さも、オレは好まない。

「勇者ヨシヒコ」を見てから好きになった。

それ以降、この人が出ているのだから、という理由で映画も観に行くことがある。

見た目の印象が強い役者さんの中には、何を演っても「本人の延長」にしか見えない人がいる。

これは、役者とてしては、ある意味不幸だとオレは思っている。

本人が全面に出てしまって、頑張って演技しているのかもしれないが、演じる役が見えてきにくい。

海外の俳優ならジム・キャリーあたりがそんな気がする。

アーノルド・シュワルツネッガー辺りになると、客も彼自身を観に来るのだから、それで良いだろう。

役者として良いのかは別だけれど。

山田孝之さんの場合、オレが初めて「勇者ヨシヒコ」を見た時、

「これは素なんじゃね?」

と思ったくらい、普通だった。

一方で「のぼうの城」のいかにも戦国時代の武将らしい堂々とした、それでいてどこか要領が悪い武士(もののふ)も「普通」だった。

「MW」は、彼が出演していなかったら、オレは観に行かなかったし、あの映画は彼の良さを全く引き出していなかったと思う。

彼の上手さは、某缶コーヒーのCMだろう。

あのCMで、山田孝之さんは複数の人物を演じ分けていた。

顔の表情や口調がどうというのではない。

山田さんは目で演じ分けていた。

あの大きな目で、人物の性格を表していた。

ヨシヒコの目は、一言で言えば「死んでいる」。

自分自身の意志をほとんど持たず、「勇者」というレッテルを何の疑いも無く受け入れる「受け皿」だ。

時々表れる「ヨシヒコ」は女好きで、出来るだけ楽をして暮らしたい大人になれないおバカであり、勇者としての使命感などこれっぽっちも持っていない。

ただ「勇者」として指名されたから、その流れに流されているだけだ。

だから、「ヨシヒコ」が勇者の使命を口にする時、その言葉は空虚で意味がない。

そんなヨシヒコを山田さんは目で演じている。


山田さんに「平凡な市井の人」を演じてみて欲しいと思う。

職人や自営業者ではなく、妻子のある住宅ローンを抱えたサラリーマン。

山田さんはどんな目で演じるだろうか。


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